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2004年Vol.5 No.1

総説

乳癌手術におけるセンチネルリンパ節の術中診断

著者

稲治 英生*1, 柄川 千代美*1, 菰池 佳史*1, 元村 和由*1, 南雲 サチ子*2, 春日井 務*3, 小山 博記*4

*1 大阪府立成人病センター 乳腺・内分泌外科
*2 大阪府立成人病センター 臨床検査科細胞診
*3 大阪府立成人病センター 病理細胞診断科
*4 大阪府立成人病センター 総長

Summary

センチネルリンパ節とは,腫瘍からのリンパ流を直接受けるリンパ節を指す. 因みにセンチネルとは「 見張り 」といった意味合いであるがあえて邦語訳はせずセンチネルリンパ節と呼びならわされている. 『 センチネルリンパ節に癌の転移がなければその他の所属リンパ節にも転移がない可能性が極めて高い 』,と結論付けてよいだけのエビデンスがすでに多数蓄積されている. センチネルリンパ節の概念自体, 1977年陰茎癌で提唱されたものであるが,乳癌領域への応用は1993 年の Krag らのラジオアイソトープを用いたセンチネルリンパ節生検の報告に端を発する. センチネルリンパ節生検の登場により乳癌外科手術は新時代を迎えつつある.

即ち,癌の手術においてリンパ節郭清( 癌周辺のリンパ節をすべて切除すること )は必須のものとして長年無批判に行われてきた. しかし,少なくとも乳癌においては大規模比較試験の結果から,予防的リンパ節郭清の治療的意義は揺らいできた. 「個別化された医療」が現代医療のキーワードの一つであり,リンパ節転移陰性例にはリンパ節郭清を省略しようとする動きは当然の成り行きであったともいえる. 画像診断による所属リンパ節の転移診断に限界があることは誰の目にも明白であり,勢いセンチネルリンパ節生検に対する期待が高まった。本稿では,乳癌手術におけるセンチネルリンパ節生検の意義とその術中診断を中心に述べる.

Key Words

癌, センチネルリンパ節, 腋窩リンパ節郭清, 術中診断, 微小転移