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2011年Vol.34 Suppl.3

総説

DICの最前線

著者

朝倉 英策

金沢大学附属病院 高密度無菌治療部(血液内科)

Summary

播種性血管内凝固症候群 ( disseminated intravascular coagulation ; DIC ) は,基礎疾患の存在下に全身性持続性の著しい凝固活性化をきたし,細小血管内に微小血栓が多発する重篤な病態である.凝固活性化と共に線溶活性化がみられるが,その程度は基礎疾患により相当な差違がみられる.進行すると血小板や凝固因子といった止血因子が低下し,消費性凝固障害 ( consumption coagulopathy ) の病態となる.

DIC の二大症状は,出血症状と臓器症状であるが,臨床症状が出現すると予後は極めて不良となるため ( 厚生労働省研究班の疫学調査では,死亡率56% ),臨床症状の出現がない時点で治療開始できるのが理想である.

なお,国際血栓止血学会 ( International Society on Thrombosis and Haemostasis ; ISTH ) の科学的標準化委員会 ( SSC ) は,「DIC は,種々の原因により,局所に留まらない血管内凝固活性化をきたす後天性の症候群である.DIC は,微小血管障害に起因したり,あるいは,微小血管障害を引き起こし,重症化すれば臓器不全をきたす.」と定義している.ISTH の見解は,現時点でのDIC に対する世界の平均的な捉え方を表しているものと考えられる.確かに,敗血症などの重症感染症に合併したDIC の病態は的確に示しているが,急性白血病 ( 特に急性前骨髄球性白血病 ),腹部大動脈瘤,常位胎盤早期剥離,転移性前立腺癌などに合併したDIC のように,著明な線溶活性化のため出血症状がしばしば重症化しやすい病態を有するDIC ( 臓器症状はあまり見られない )を考慮していない点に問題がある.

Key Words

播種性血管内凝固, LPS 誘発DICモデル, 組織因子誘発DICモデル, DIC病型分類