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2024年Vol.24 No.1

論文

全自動血液凝固測定装置CN-6000における血小板凝集レベルの基礎的検討および多血小板血漿の調製に関する情報提供

著者

坂寄 輔*1, 江頭 舞*2, 中島 享子*1, 河野 麻衣*1, 北野 圭介*2, 岩崎 陽介*3

*1 シスメックス株式会社 臨床戦略・学術本部 臨床戦略第二部
*2 シスメックス株式会社 診断薬エンジニアリング本部
*3 シスメックス株式会社 臨床戦略・学術本部 学術部

Summary

抗血小板薬治療は古くから血栓症発症予防として有用な治療として使用されており,ADP受容体阻害薬およびアセチルサリチル酸(以下,アスピリン)を使用する二剤併用療法が標準的な治療法である。また,近年のステント技術の発展に伴い抗血小板薬治療の管理の重要性はますます増している。抗血小板薬治療の効果判定の指標として,我々はADP受容体阻害薬およびアスピリンの効果確認を目的とするそれぞれADP induced PAL(以下,APAL)およびCollagen induced PAL(以下,CPAL)という血小板凝集レベルの指標を開発し,既存の全自動血液凝固測定装置に搭載している。全自動血液凝固測定装置を用いた血小板凝集能測定は,それまで主流であった半自動測定装置による非常に煩雑な検査の効率化を実現し,血小板凝集能測定の標準化が期待される方法である。今回,これまでの全自動血液凝固測定装置が保有していた機能に,試薬溶解後の使用濃度への段階希釈の自動化機能を新たに搭載した全自動血液凝固測定装置CN-6000(シスメックス株式会社:以下,CN-6000,シスメックス)におけるAPALおよびCPALの同時再現性評価を行った。加えて,既存装置である全自動血液凝固測定装置CS-5100(以下,CS-5100,シスメックス)と比較検討した。

同時再現性(n = 5)はAPALおよびCPALで,正常試料においてCV(%)が3%以内,異常試料では8%以内であった。また,CS-5100との相関性(n = 85(APAL),n = 82(CPAL))は,APALでr = 0.971,CPALでr = 0.994と極めて良好な結果が得られた。

また,試料として用いる多血小板血漿(以下,PRP)の情報提供を目的として,国際血栓止血学会が推奨しているPRP調製方法に準拠した際のPRPの吸光度(以下,mOD)の評価を実施した。PRPの波長660 nmにおけるmODの正常基準範囲を算出したところ,PRPの評価開始時点のmODから乏血小板血漿(PPP)のmODを差し引いた値は400.7~786.9であった。

今回の我々の結果から,CN-6000における血小板凝集レベルであるAPALおよびCPALは良好な再現性および既存装置であるCS-5100との良好な相関が示された。CN-6000は試薬溶解後の使用濃度への段階希釈の自動化による手技間差の軽減が期待できることから,今後の血小板凝集能検査の標準化へさらなる一助になると考えられる。

Key Words

血小板凝集, 透過光法, CN-6000, レボヘム, 自動化, 抗血小板薬, PAL(Platelet Aggregation Level)