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2009年Vol.10 No.2

総説

病院における感染症検査室は支出抑制部門

著者

大塚 喜人

亀田総合病院 臨床検査部

Summary

近年,医師の不足と偏在により産婦人科,小児科,麻酔科などの診療機能が低下したり,一部診療科の閉鎖などから経営悪化が起こったり,医療崩壊の危機が叫ばれている. 2007年以降は追い討ちをかけるように病院の倒産が急増し,わが国の医療はある地域において完全に崩壊状態となっている.

存続している病院の中でも,東京都内の病院では2007年に42%の病院が赤字経営となり,2008年には54%の病院が赤字経営となっていると全日本病院協会が報告した. また,日本病院会と全国公私病院連盟の調査では,全国の病院の約4割にあたる3,412病院に対し,2008年6月の1ヶ月の医業収支を尋ね,1,206病院が回答した. それによると,医業収入は100床当たり約1億3,609万円で,入院収入が前年比0.1%増で横ばいであったが,外来収入は3.6%減となった. これに対し,医業費用は約1億4,870万円で1.2%増となり,100床当たりの赤字額は月額1,261万円にも昇り,医業外を含めた総収支でみると76.2%が赤字経営となっている.

このような医療危機は,バブル崩壊後の様々な医療改革によってはじまり,2年毎に行われる診療報酬の引き下げは臨床検査業界にも大打撃を与えてきた. なかでも感染症検査は,その影響が顕著に表れ,外注化が進んできた項目の一つである. 本稿では,感染症検査は病院経営の健全化に向けて経営改革を進めるにあたり,本当に足枷的存在なのか考えてみたい.

Key Words

医療経済, 微生物検査, 感染症, 治療費, 抗菌薬