製品・サービスを通じた医療課題解決

製品の普及等による医療アクセスの改善

世界には貧困問題や、医療環境・医療制度・医療供給システムの未整備などにより、適切な医療を受けることが困難な地域が存在します。

シスメックスは、グローバルに事業を展開する企業が果たすべき責務の一つとして、一人でも多くの方が適切な医療を受けられるよう、医療アクセスの改善に向けた取り組みを進めています。

三大感染症への取り組み

三大感染症と呼ばれる、HIV/AIDS、結核、マラリアは、多数ある感染症の中でも世界規模で長期にわたり流行している感染症で、毎年約300万人もの命を奪います。近年、治療薬やワクチンの普及により、感染規模は縮小しつつありますが、経済的理由や社会的・文化的な背景により、貧しい方や社会的に弱い立場におかれた方にまで予防・治療の医療サービスが届いていないのが現状です。また、健康を害することは、労働力の減少や、生産性の低下、医療費の増大などにつながり、経済成長にも影響を及ぼします

シスメックスでは、これまで培ってきた臨床検査における検出技術を活かし、診療の判断材料に寄与する製品の開発を進めるとともに、産官学と連携した取り組みを推進することで、三大感染症の解決に貢献していきたいと考えています。

  • 出典:グローバルファンド日本委員会/三大感染症を知る

新興国・開発途上国におけるHIVの診断や治療の質向上への貢献

CyFlow™ Counter

CyFlow™ Counter

HIV感染者数は、アフリカを中心として、世界で3,690万人に上ります※1。これらのHIV感染者への治療方針確定や、治療効果のモニタリングなどにおいては、CD4陽性リンパ球の数や比率を調べる検査が重要な役割を果たしています。

シスメックスは、シスメックス パルテックが開発・製造するCD4陽性リンパ球検査システム「CyFlow™ Counter System」を新興国や開発途上国で提供しています。このシステムは、⾎液中のCD4陽性リンパ球の数と⽐率をわずか3分で測定し、⼩型・ポータブル式であることに加え、メンテナンスを簡略化するなど、簡便かつ迅速、安定的な検査を⽀援します。

2018年8月に「CyFlow™ Counter System」はWHOによる事前認証(Prequalification)※2を取得しました。WHO事前認証は、医療機器や医薬品など資源の限られた国々で安心して使用できるようにするために、WHOが性能を担保していることを示す認証制度です。この認証取得を機に、医療資源が限定される国や地域への導入をさらに推進し、新興国や開発途上国におけるHIVの診断や治療の質向上に貢献していきます。

  1. 出典: Number of people (all ages) living with HIV (WHO, 2017)
  2. 医薬品・検査・ワクチン等のヘルスケア製品を資源の限られた国々で安心して使用できるようにするため、WHOが品質や安全性、効能などを担保していることを示す認証制度。 2001年にHIV/AIDS用の医薬品向けに制度が開始され 、現在では新興国・開発途上国が物品調達時に参照するリストとして使われたり、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(Global Fund)をはじめとした基金団体がこの事前承認を受けた製品を優先的に選択している。

マラリア排除に向けた取り組み

マラリア・コンソーシアムによるイニシアチブ 

マラリア・コンソーシアムによるイニシアチブ 

三大感染症の一つであるマラリアはここ数年減少傾向にありますが、世界で毎年約2億人が感染し、約44万人が死亡しており※1、死亡者数の9割以上を占めるアフリカでは、5歳未満の子どもの命が2分間に1人のペースで奪われています※2

シスメックスはマラリア排除に向け、自社の事業分野である検査・診断領域において、医療へのアクセスを改善するための活動を推進しています。

2019年4月にヘマトロジー分野の新製品「Automated Hematology Analyzer XN-31」が、欧州IVD指令に適合してCEマークを取得し、欧州において順次発売予定です。従来のマラリア検査では、顕微鏡や迅速診断キットが用いられていましたが、15分から30分の時間がかかること、また顕微鏡検査には熟練の技術を要することが問題でした。 それに対してXN-31は、マラリア原虫等感染赤血球の有無を約1分で迅速に測定することができます。 また、その感染赤血球数の定量やマラリア原虫などの種類を示唆する情報を提供することも可能です。南アフリカ・インドで行った臨床評価においては高い感度および特異度を得ており、臨床用途としてマラリアの診断補助に活用可能※3です。 今後、各国での薬事承認取得に向けた活動を推進し、マラリアまん延地域や、マラリアの流入防止に取り組む先進諸国へ広く導入することで、世界におけるマラリア排除(マラリア・エリミネーション)に貢献します。

また、2016年より産官学によるマラリア・コンソーシアムに参画し、「血液検査」分野における役割を担っています。マラリア・コンソーシアムは2018年4月、アジア・アフリカにおける「マラリア・エリミネーションに向けたわが国発のP3(Public-Private Partnership)」を日本政府に提案し、日本企業の技術を結集してマラリア・エリミネーションを目指しています。

  1. 出典:「WHO World Malaria Report 2018」
  2. 出典:Malarianomore.org.uk
  3. 本結果のみで診断を行うことはできません。その他の臨床情報を用いた医師の総合的な判断により確定診断がなされます。

グローバルヘルス技術振興基金「GHIT Fund」に参画

シスメックスは、「開発途上国の人々が感染症による苦難を乗り越え、先進国と同様に繁栄と長寿社会を享受できる世界を目指す」を活動のビジョンとする公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)に2015年より参画しています。GHIT Fundの活動は第2期目(2018~ 2022年)に入り、当初の「製品開発」から「その製品を必要としている人々へ届ける活動」にシフトしています。当社も引き続きGHIT Fundの第2期の活動に参画し、日本発の技術革新による新たな感染症診断薬の開発・提供に向けた取り組みを推進し、開発途上国における感染症撲滅に貢献していきます。

現地の医療水準の向上を支援

シスメックスでは、医療インフラの整備や医療水準向上の一環として、アジア数カ国で外部精度管理支援などの臨床検査の質向上のための活動を行っています。またアフリカでは外務省やJICAなどの国際協力団体と連携し、医療従事者への教育や製品・サービスの提供による支援を行っています。

ガーナ共和国への尿検査自動化技術普及促進による医療環境の向上を支援

キックオフセレモニーの様子

アフリカ諸国では、がん、糖尿病、腎臓病などの非感染性疾患(NCDs)の患者さんが増加しています。NCDs対策においては、予防や早期発見・早期治療が重要とされている一方で、スクリーニング方法の一つとして有効かつ比較的簡便な尿検査が十分に普及していないことや、手作業による検査結果の不均一性などが課題となっています。

そのような背景から、シスメックスは、ガーナ共和国を対象とする「尿検査自動化技術普及促進事業」をJICA公募事業「開発途上国の社会・経済開発のための民間技術普及促進事業」に提案し、採択されました。

この事業では、当社の全自動尿検査搬送システムのガーナ国立教育病院への導入に加え、現地の医療従事者の方に向けた尿検査自動化の臨床的価値や検査の品質管理、装置メンテナンスなどに関する研修を実施します。この活動を通じて、ガーナにおけるNCDsの予防や早期発見・早期治療の促進に貢献していきます。

国際基準に適合した臨床検査室の品質管理体制構築を支援

メンターシップトレーニング

メンターシップトレーニング

シスメックスは、医療⼈材および医療インフラの不⾜とともに医療の質確保が課題とされているアフリカ ナミビア共和国において、臨床検査室の品質管理体制構築を支援しました。Namibia Institute of Pathologyの3施設に対して当社製品を導⼊し、国際基準(ISO 15189)に適合した臨床検査室の運営を⽬指した品質管理システム運⽤マニュアル「Sysmex Quality Guidance Manual」を⽤いたメンターシップ⽅式のトレーニングを提供しました。

アフリカ地域では、これまでザンビア共和国とジンバブエ共和国においても同様の取り組みを通じて検査室の品質向上支援活動を展開しており、これらの実績を布石として、アフリカの近隣諸国への水平展開を図っていきます。

  • 人を単に管理するという発想でなく、組織の方向性や価値観を明確にした上で、事業に関わる全ての人の成長と成功を追求し、人を動機付け、能力を向上させていくように導く姿勢やスキル、また、そのしくみによって組織を活性化していくマネジメントのこと。

臨床検査の標準化・質向上に向けて学術支援活動を展開

シスメックスは、中国やモンゴル、カンボジア、ミャンマー、タイ、フィリピンの政府機関や基幹病院、大学などと学術支援活動に関する契約を締結し、支援を行ってきました。

モンゴルにおいては、従来のヘマトロジー・生化学・免疫分野に加えて、2017年からは新たに血液形態検査分野にも対象を拡大し、支援活動を継続しています。現地の臨床検査技師に、技術的、学術的ノウハウを提供するとともに、国家的に実施される血液形態検査の外部精度管理のしくみの構築・運営を支援することで、モンゴルの医療水準の向上に貢献しています。

アジア地域における外部精度管理サービス実績

実績
モンゴル ヘマトロジー・生化学・免疫・血液形態検査分野で外部精度管理を実施
ミャンマー、フィリピン、
カンボジア、タイ
血球計数分野で外部精度管理を実施

その他医療従事者への教育支援

医療アクセスの向上には、医療インフラの整備とともに、適切に訓練を受けた医療従事者の存在が不可欠です。シスメックスは、臨床検査室の品質向上や臨床検査の標準化・質向上を通じた教育支援に加え、医療従事者の方々を対象としたセミナーや勉強会の開催、最新の学術情報の発信などを実施しています。