シスメックス株式会社(本社:神戸市、代表取締役会長兼社長:家次 恒 以下「シスメックス」)は、当社が開発したOSNATM法による非小細胞肺がんのリンパ節転移検査が2017年10月1日付で保険適用されましたことをお知らせします。
がん患者におけるリンパ節転移検査は、通常、手術で摘出したリンパ節の切片を用いて病理標本を作製し、術中または術後に病理医が顕微鏡によりがん細胞の有無を確認することで判定がなされます(病理組織学的検査)。この検査は病理医の作業負担が大きく、病理医の不足と相まって医療現場における課題となっています。
シスメックスは、独自の技術であるOSNATM(One-Step Nucleic Acid Amplification:直接遺伝子増幅)法を用いたリンパ節転移検査システムにより、リンパ節転移検査の自動化を実現し、本検査の適用がん種の拡大に取り組んできました。2008年11月には乳がん、2013年10月には大腸がん、胃がんのOSNATM法によるリンパ節転移検査が日本で保険適用されています。
OSNATM法によるリンパ節転移検査システムは、「遺伝子増幅検出装置 RD-100i」と「遺伝子増幅検出試薬 リノアンプTMBC 」を組み合わせることにより自動的かつ約30分で、永久標本※1を用いた病理組織学的検査と同等以上の精度にてリンパ節転移の有無を判定可能とし、既に国内では100以上、海外では200以上の医療機関でルーチン検査に使用されています。
このたび、乳がん、大腸がん、胃がんに加え、非小細胞肺がんのOSNATM法によるリンパ節転移検査が、新たに国内での保険適用を受けました。
OSNATM法による非小細胞肺がんのリンパ節転移検査の提供により、術中に所属リンパ節※2への転移の有無を精度よく判定できるため、選択的リンパ節郭清※3の実施や郭清範囲の縮小、また肺切除範囲の縮小可能な患者さんを選択することが可能となります。これにより、不要な肺切除やリンパ節郭清に伴う、患者さんの術後合併症や呼吸機能低下の可能性を低減することにもつながり、ひいては入院期間の短縮など患者さんの負担軽減やQOL向上に貢献します。
シスメックスは今後も、OSNATM法によるリンパ節転移検査システムのさらなるグローバル展開を図るとともに、リンパ節転移検査の標準化や個別化医療の発展に取り組んでいきます。
【保険適用の内容】
測定項目: | サイトケラチン19(KRT19)mRNA | |||
測定方法: | OSNATM法 | |||
主な測定目的: | 摘出された非小細胞肺がん所属リンパ節中のサイトケラチン19(KRT19)mRNA の検出(非小細胞肺がんにおけるリンパ節転移診断の補助) | |||
点数: | 2,400点(一連につき1回に限り算定) |
※1 | 永久標本: 手術で採取した組織をホルマリンで固定した標本で、がんの術後の確定診断に用いられる。術中迅速診で用いられる凍結標本と比べてより正確な診断が可能。 |
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※2 | 所属リンパ節: がんの近くにあり、他のリンパ節と比べてがんが転移する可能性が高いとされるリンパ節のこと。 |
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※3 | リンパ節郭清: がんの再発を抑えるために、がんが転移している可能性があるリンパ節を手術時に切除すること。 |