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他家iPS細胞由来 網膜色素上皮細胞(RPE細胞)の移植前免疫反応検査法に関する共同研究開発を開始

 シスメックス株式会社(本社:神戸市、代表取締役会長兼社長:家次 恒 以下「シスメックス」)、株式会社ヘリオス(本社:東京都港区、代表取締役社長兼CEO:鍵本 忠尚 以下「ヘリオス」)および大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:多田 正世 以下「大日本住友製薬」)の3社は、このたび他家iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞(RPE細胞)の移植前免疫反応検査法を確立するための共同研究開発を開始しましたので、お知らせします。

 iPS細胞※1を用いた移植治療には、患者本人由来のiPS細胞から作製した細胞を用いる自家移植と、ある一定の条件を満たしたドナー由来のiPS細胞(他家iPS細胞)から作製した細胞を用いる他家移植の2つの方法が存在します。このうち自家移植は、すでに治療の実績がありますが、患者本人由来の細胞からiPS細胞を作製し、その後iPS細胞を移植に適した細胞に分化※2誘導する必要があり、移植用の細胞の作製に時間を要することや、製造コストが高額となることなどが課題となっています。
 一方、他家移植の場合、他家iPS細胞をセルバンク※3等により管理し、標準化された工程で計画的に移植用の目的細胞の生産を行うことによって、品質が担保された移植用の細胞を必要なときに安定的かつ安価に供給することが可能になると考えられています。しかし、他家iPS細胞由来の細胞を治療に用いる他家移植の場合、移植後に免疫拒絶反応※4が生じることも想定されることから、免疫拒絶反応の有無を含めた移植適合性を、移植前に確認するための新たな検査法の開発が求められています。

 このたび、シスメックス、ヘリオスおよび大日本住友製薬は、ヘリオスおよび大日本住友製薬が国内で共同開発する加齢黄斑変性※5等の眼疾患を対象とした他家iPS細胞由来のRPE細胞※6を含有する再生医療等製品の、移植前免疫反応検査に関して共同で研究開発を開始しました。
 ヘリオスおよび大日本住友製薬は、他家iPS細胞からRPE細胞を作製してシスメックスに提供し、シスメックスは、自社が保有するイメージングフローサイトメーターやタンパク質解析技術を用いて移植前免疫反応検査法の開発を行います。検査で得られた結果は、患者様にとって移植後における免疫抑制剤の投与回数/投与量の最適化といった他家細胞移植後の免疫抑制療法に反映されることが期待されます。

 シスメックス、ヘリオスおよび大日本住友製薬は、医療のさらなる質の向上や効率化に向けた技術開発を進めるとともに、最先端技術の実用化に向け研究開発に取り組んでいきます。


【注釈】

  ※1




※2



※3




※4




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※6
iPS細胞:
人工多能性幹細胞 (induced pluripotent stem cell)の略。ヒトの皮膚の細胞などにいくつかの因子を導入することによって作製された、さまざまな組織や臓器の細胞に分化する能力を持った多能性幹細胞。

細胞分化:
ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞のような幹細胞、或いは前駆細胞が、特定の機能と形態を持つ細胞へ変化すること。

セルバンク:
最終製品の安定的・継続的製造のため、単一の細胞から一定の方法で調製(拡大培養)された細胞が、複数の容器に分注され、一定条件下で保存されている状態のこと。iPS細胞の場合、日本人の健常ボランティアの細胞を収集する再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトが進められている。

免疫拒絶反応:
生体が自己を守るためにもっている、異物の侵入に抵抗し、これを阻止しようと免疫細胞が活性化する反応のこと。組織や細胞の移植の成否に大きく関わるため、現状では免疫抑制剤を用いるなどしてこの拒絶反応をコントロールしている。

加齢黄斑変性:
物を見るときに重要なはたらきをする網膜の黄斑という組織が、加齢とともにダメージを受けて変化し、視力の低下を引き起こす病気。加齢黄斑変性には黄斑の組織が加齢とともに萎縮する「萎縮型」と、網膜のすぐ下に新しい血管(新生血管)ができて、この血管が黄斑にダメージを与える「滲出型」がある。

網膜色素上皮細胞(RPE細胞):
網膜の最も外側の層を覆う組織を構成する細胞。メラニン色素を含み、網膜内に入る余分な光を吸収し、散乱を防ぐなどの機能をもつ。また、外側の脈絡膜と内側の網膜の間の物質の出入りを制御する関門の役割も果たす。
 

以上
  • プレスリリースに掲載されている情報は、発表日現在の情報です。
    その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。

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