




インフルエンザのおはなし
冬になるたびに流行を繰り返すインフルエンザ。かぜと同じようなものだと思っている人も多いかもしれません。しかし、かぜはほとんど重症にならないのに比べて、インフルエンザは抵抗力の弱い人の場合は重症化することも多く、最悪の場合は死に至ることもあるのです。この冊子では、かぜとインフルエンザの違いや、予防方法・治療方法などについて分かりやすく紹介しています。ぜひ正しい知識を得るためにお役立てください。
1インフルエンザとはかぜより症状の重い感染症ですインフルエンザは、インフルエンザウイルスの感染によって起こる感染症で、毎年、冬(日本では12~4月ごろ)に流行します。一般的なかぜが「普通感冒」と呼ばれるのに対して、インフルエンザは「流行性感冒」とも呼ばれています。インフルエンザにかかると38 ~ 40 度の高熱が出ることが多く、悪寒や頭痛、筋肉痛、全身倦怠感などの強い全身症状があらわれます。さらに、やや遅れてのどの痛み、咳や痰など、かぜのような呼吸器症状も見られます。インフルエンザはかぜより潜伏期間が短いのですが、感染力が強いので大流行しやすいのが特徴です。特に高齢者の場合、インフルエンザをきっかけに肺炎にかかったり、持病が悪化させるケースも多いので注意が必要です。重症化すると、最悪の場合は死に至ることもあります。かぜだと思って甘く見ないで、「インフルエンザかな?」と思ったら、早めにかかりつけの医師を受診しましょう。 【インフルエンザの特徴】・潜伏期間が短い・感染力が強い・高熱が出るなど、症状が重い・大流行をすることがある
2症状と経過発熱などの全身症状があらわれますインフルエンザウイルスに感染すると、1~5日間(平均3日間)の潜伏期間の後、突然38~40℃の高熱が出ます。同時に、悪寒や頭痛、倦怠感、筋肉痛、関節痛などの強い全身症状があらわれます。その後、のどの痛みや鼻水、咳など、かぜに似た呼吸器症状も出てきます。熱はふつう3~7日間で下がりますが、熱が下がっても、体内にインフルエンザウイルスが残っている間は人にもうつります。早く症状がよくなっても、解熱してから2~3日は安静にしましょう、 【インフルエンザの経過】感染潜伏期間(1~5日)発熱などの全身症状咳などの呼吸器症状ウイルスの排出期間(3~7日)回復
3合併症高齢者や子供は特に注意を!健康な成人なら、インフルエンザにかかってもほとんど自然に治ります。ただし、65歳以上の高齢者や慢性疾患の患者、乳幼児は重症化しやすく、その可能性は健康な成人の数百倍ともいわれています。特に高齢者や慢性疾患患者は肺炎を合併しやすく、インフルエンザによる死亡者の90%以上が高齢者です。乳幼児が初めてインフルエンザに感染したときも症状が重くなりがちです。中でも、死亡や重い後遺症につながりやすい合併症が「インフルエンザ脳症」です。近年、5歳以下の乳幼児を中心に多発していることから、大きな社会問題になっています。【ワクチン接種で予防しよう】感染を防ぐために、インフルエンザが流行する前にワクチン接種(予防接種)を受けましょう。ワクチンを接種したからといって100%インフルエンザが防げるわけではありませんが、万一感染してしまった場合も軽くすむことが多いからです。ただし、乳幼児には大人ほどワクチンが効きません。周囲にいる大人ができるだけワクチン接種をして、乳幼児がインフルエンザウイルスにさらされにくい環境をつくってあげることが大切といえるでしょう。
4かぜとの違い高熱や悪寒が発症のサインですかぜの症状といえば、鼻水やくしゃみ、咳などの呼吸器症状が中心ですが、インフルエンザの場合は、成人で38~39度、子供では38~40度の高熱が突然出るのが特徴です。悪寒、頭痛、関節痛、筋肉痛など、その他の全身症状も強くあらわれます。
5感染様式咳、くしゃみで感染しますインフルエンザにかかった人が咳、くしゃみなどをすると、つばなどの飛沫とともにインフルエンザウイルスをまき散らしてしまいます。これを他の人が鼻や口から吸い込むとインフルエンザに感染します(飛沫感染)。特に空気が乾燥しているとうつりやすく、これが冬に流行する原因になっています。インフルエンザウイルスが体内に入ると、8 時間後に100 倍に、24 時間後には100 万倍に増えるといわれています。発熱や関節痛などの症状は、インフルエンザウイルスを排除しようとする免疫のはたらきによるものと考えられています。
6ウイルスの種類と特徴A型、B型、C型の3種類がありますインフルエンザウイルスの表面には、細胞に侵入するための突起があります。この突起の形やウイルス内部のタンパク質の違いから、A型、B型、C型の3 種類に分類されています。A型ウイルスは、表面構造の違いによって、さらに何種類かに分かれます。このうち、大流行を起こすのはA型とB型です。現在では、A/H1N1(ソ連)型ウイルスとA/H 3 N 2(香港)型ウイルス、およびB型ウイルスの3 種類が流行しています。
7診断スピーディーな検査が可能です本来、インフルエンザを診断するためには、体内にインフルエンザウイルスがあるかどうかを調べる必要があります。うがい液などからウイルスを分離する方法や、血液中のインフルエンザウイルス抗体を測定する方法が確実ですが、結果が出るまで早くて2時間、遅いと2週間もかかってしまうのが欠点です。最近では、鼻や喉から採取した試料を使って10 ~ 15 分程度でウイルス抗原の有無を判定できる「迅速診断キット」が普及したので、受診したその場でスピーディーに診断できるようになりました。最終的には、これらの検査結果や臨床症状から医師が総合的に判断します。
8治療方法一日も早い受診を!インフルエンザが流行している時期にかぜのような症状が出たら、できるだけ早くかかりつけの医師を受診しましょう。症状が軽いからといって「今日は忙しいから無理」「まだ大丈夫」、などと考えて後回しにしていると、インフルエンザだけでなく肺炎などの合併症まで引き起こしてしまうことがあります。インフルエンザは、早期診断、早期治療の効果が非常に大きい病気です。早めに治療すれば自分の体を守れるだけでなく、周りの人にもインフルエンザをうつさなくてすむのです。 治療法は大きく分けて3種類インフルエンザの治療には、安静を基本とする「一般療養」、熱や咳などの症状を抑える「対症療法」、抗ウイルス薬を使ってウイルスの増殖を抑える「化学療法」の3 つがあります。 ●自然な回復をめざす (1) 一般療法自然治癒をめざす治療法です。基本は、できるだけ安静にし、十分な睡眠と栄養をとって体力をつけること。無理をすると病気が長引いたり、肺炎のような合併症を引き起こすもとになるのでゆっくり体を休ませます。高熱が続くと脱水症状が起こりやすいので、お茶やジュース、スープなどで水分をたっぷり補給することも大切です。 ●症状をやわらげる (2) 対症療法インフルエンザそのものを治すわけではなく、つらい症状をやわらげる治療法です。発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などに解熱鎮痛剤、鼻水、くしゃみに抗ヒスタミン剤、咳、痰に鎮咳去痰剤を使います。
ただし、これらの症状はウイルスに対して体の免疫システムや防御反応が正常に働いている結果なので、薬で無理に抑えない方がよいという考え方もあります。また、インフルエンザにかかっている時に使用してはいけない解熱剤もあります。小児がアスピリンを含んだ解熱剤やかぜ薬を服用すると脳炎、脳症の発生頻度が高くなる危険があるほか、体温や血圧の低下を招く可能性のある解熱剤もあります。薬は決して自己判断で服用せず、必ずかかりつけの医師に相談しましょう。 ●ウイルスの活動を抑える (3) 化学療法抗インフルエンザ薬でインフルエンザウイルスの増殖を抑える治療法です。迅速診断キットを使えば10 ~ 15 分でインフルエンザが診断できるようになったことから、治療薬として処方されるようになりました。抗インフルエンザ薬には3 種類あり、いずれもウイルスの増殖を抑える働きがあります。これらは、発病してから48時間以上経っている場合は効果がありません。また、タミフル服用後に異常行動が発生する例が報告され、10歳代の患者には原則タミフルの使用が控えられています。効果が期待できるかどうかは病状によって異なるので、使用するかどうかはかかりつけの医師の判断に従いましょう。なお、抗生物質はインフルエンザウイルスには効果がありません。合併症の肺炎を引き起こしている人や、高齢者で肺炎を引き起こす可能性の高い人に予防的に使う以外では使われません。
9予防のために流行前にワクチン接種を!【ワクチン接種の基礎知識】 ●効果インフルエンザワクチンの発病阻止率は、成人の場合で約70~90%で、小児ではもっと低くなります。現在のワクチンではインフルエンザの発症を完全に防ぐことはできませんが、万一かかった場合でも重症化を防ぐ効果があります。 ●受けたほうがよい人・65歳以上の高齢者・呼吸器系や循環器系に慢性の基礎疾患がある人・気管支喘息をもつ小児 ※重症化を防ぐために予防接種が推奨されています。 ●受けてはいけない人・明らかな鶏卵・鶏肉アレルギーのある人 ※妊婦または妊娠の可能性のある人は医師に相談しましょう。 ※体調が悪いときはワクチン接種を避けましょう。 ●接種時期・流行期を迎える前、12月上旬までに ●接種回数・原則として、1~4週間の間隔をおいて2回 ※65歳以上の高齢者、昨年予防接種を受けた人、近年インフルエンザにかかった人は1回でよいとされていますが、最終的には医師が判断します。 ●費用 1回の費用は3,000~5,000円程度 ※任意のため、自己負担です。
インフルエンザは冬に流行します。インフルエンザウイルスが低温・乾燥を好むうえ、冬はのどの粘膜の防御機能も低下するので、感染しやすくなるのです。感染を防ぐためには、ぜひ流行する前にインフルエンザワクチン接種を受けておきましょう。また、普段からうがいや手洗いの習慣をつけておくことなども大切です。 【日常生活の注意点】 ●体力・抵抗力をつけよう!体力が低下していると、インフルエンザウイルスに感染しやすくなります。バランスのとれた食事と十分な睡眠を心がけて、抵抗力をつけておきましょう。 ●外から帰ったら、うがい、手洗い、洗顔を!外出先で、口の中や手、顔などにインフルエンザウイルスが付着する場合があります。家に帰ったらうがいや手洗い、洗顔でウイルスを洗い流しましょう。 ●室内に適度なうるおいを!インフルエンザウイルスは乾燥した空気を好みます。湿気に弱いので、加湿器などで十分な湿度(50~60%)を保ちましょう。加湿器がない場合は、濡れたタオルや洗濯物を室内に干すのもおすすめです。室内の空気は定期的に換気しましょう。 ●流行期には人ごみを避けよう!高齢者や疲れや睡眠不足で免疫力が低下している人は、人ごみや繁華街への外出を控えたほうがよいでしょう。どうしても外出しなければならない場合は、なるべくマスクを着用しましょう。他人からの感染を防ぐとともに、他人への感染も防ぎます。
10新型インフルエンザ新型インフルエンザとは?新型インフルエンザウイルスとは、今まで鳥類やブタにのみ感染していた鳥・豚インフルエンザウイルスが、当初は感染した鳥や豚と接触してフンや羽を吸い込むなど、体内に大量のウイルスが入ってしまった場合に偶発的に人に感染していたものが、鳥や人の体内で性質が変わり、人から人へ感染するように変異したものです。このウイルスが人に感染して起こるのが「新型インフルエンザ」です。 2009年4月にメキシコで発生が確認された新型インフルエンザ(A/H1N1)は、ブタインフルエンザが変異してヒトからヒトへ感染するようになったものです。また、他にも新型インフルエンザとなる可能性が高いウイルスとして、主に東南アジアで流行している鳥類インフルエンザウイルス(H5N1)が挙げられており、これは、既に鳥の間だけでなく、鳥からヒトへの感染も確認されています。新型インフルエンザに対する抵抗力(免疫)は多くの人が持っていないと考えられます。そのため、発生した場合は世界中で同時大流行(パンデミック)を引き起こす可能性があり、人命や社会経済活動に多くの被害をもたらすことが心配されます。
【鳥インフルエンザから新型インフルエンザへ】鳥から鳥へ鳥から人へ人から人へ爆発的感染のおそれ
洗いとマスクで感染防止!新型インフルエンザの症状は、季節性インフルエンザと同様に、急速に始まる発熱や咳などの呼吸器症状が主な症状です。ただし、季節性インフルエンザに比べて、下痢や嘔吐が多い可能性が指摘されています。また、治療法については、季節性のインフルエンザと基本的に同じです。新型インフルエンザの感染経路は、季節性インフルエンザの感染経路と同じで、「咳やくしゃみによる飛沫感染」と「患者や患者がふれたものからの接触感染」が主な感染経路です。そのため、通常のインフルエンザの感染予防策を習慣付けておけば、新型インフルエンザの感染予防策につながります。接触感染を避けるために、手洗いは可能な限り、頻回に行いましょう。また、咳、くしゃみなどの飛沫感染で他の人にうつさないための「咳エチケット」も感染防止に重要です。咳やくしゃみ等の症状のある人には、マスクを必ずつけてもらいましょう。飛沫感染接触感染
咳エチケット 1.マスクをもっていない場合は、ティッシュなどで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけて1m以上離れましょう。 2.鼻汁・痰などを含んだティッシュはすぐにゴミ箱に捨てましょう。 3.咳やくしゃみを抑えた手をあらいましょう。 4.咳をしている人にマスクの着用をお願いしましょう。おさえるそむけるすぐ捨てる咳をしていればマスクをつける
MEMO
おわりにインフルエンザは、かぜの延長のように考えられがちですが、最悪の場合は死に至ることもある恐ろしい病気です。しかし、最近では特効薬ができたおかげで、早めに診断を受ければ、むしろ普通のかぜより治りやすくなりました。ただし、治療が遅れると回復が遅れるばかりか、他人への感染源にもなるので周囲に迷惑をかけてしまいます。「インフルエンザかな?」と思ったらそのままにせず、早めに医療機関を受診しましょう。兵庫県立こども病院血液腫瘍科 小阪 嘉之






