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豊岡示朗先生 |
/大阪体育大学教授 |
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同陸上競技部部長 |
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世界最速のラドクリフ選手を取り上げたトレーニング論に始まり、女子長距離ランナーの適性体脂肪率や体重について語られた。そして大阪体育大学(大体大)のランナーを例に、貧血を起こすランナーの血液状態や食生活について分析された。 |
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| ●脂肪は落としにくい |
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脂肪を落とすのは非常に難しいことです。うち(大体大)の学生も1日20〜30kmを走っても太ってくる選手もいます。普通、それくらいの量を走ればやせられるだろうと思いますが、練習に比例しないで太ってくるランナーも結構、出てきます。
選手はトレーニングで走ると容易に脂肪が燃えて体重が減ったと思っています。しかし、ウォーキングで1時間歩いても燃える脂肪は12g前後、ジョギング、ランニングでもう少しスピードを上げると女性では1時間で30g前後です。結局、ランニングで脂肪を落とすには非常に時間がかかり、量的にもそう多くはない。 |
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| 今の女子マラソンの話題はラドクリフというイギリス出身、29歳のランナーです。昨年のシカゴマラソンで2時間17分18秒という世界新記録で走りました。彼女のレースを見ると日本の女子マラソンは問題にならない。ここに追いつくのは大変なことです。やはり基本的な走力が違います。彼女は1500mを4分2秒で走るスピードを持っています。彼女に関したキーワードは「スピード」、「筋力トレーニング」、「クロスカントリー」この3つが強さの秘密にあると思っています。彼女は意外にがっちりとしています。 |
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| ●ランナーの体脂肪率 |
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| 体脂肪率の話ですが、うちのランナーで体脂肪率が11.8%のランナーがいます。こういう数値を出すとたいてい内科医の先生には怒られます。「(女性で体脂肪率)15%以下の選手をトレーニングさせてはいけません」と2カ月前の学会で女医さんに言われました。しかし実際問題として15%以上の体脂肪を持った選手では中々、エリートにはなれません。 |
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| ロス五輪女子マラソン優勝のベノイトは体脂肪率10.8%といわれています。体脂肪率は同じような体型でも幅はあります。 |
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体脂肪率は、最近は比較的身近な値になりましたが、中々、体脂肪率を測定できる器具がないのが現状で、多くの指導者は身長、体重を基準に判断せざるを得ません。女子ランナーで身長155〜160cm前後で50kg以上の体重があるとデータ的には苦しいものがあります。
この身長の女子ランナーで50kgを超えるといい記録は望めないといってよい。ちなみにラドクリフ選手は身長174cmで体重54kgです。 |
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| ●生理不順 |
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| 体脂肪を落とすには、まず、走る量を増やすことです。週100kmの走破距離ではエリートになるのは難しいです。ランナーとして活躍するには週150〜160kmは必要です。 |
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| アンケート調査によると距離が増えると生理不順が増える傾向があるようです。しかし、水泳や自転車の選手はトレーニング量と生理不順は関係なく、ランナーはなりやすい傾向があります。 |
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| ある論文を読んでいたら肉の摂取量が無月経の有無に関係あるという説がありました。学生ではお金もなく肉を満足にとっていないランナーは意外に多いものです。食費は切り詰めやすく、各個人の収入もあるので肉を毎日食べろとは指導者として実際には言いづらい。また女子ランナーは大体、体脂肪率15%前後を境に生理不順の有無が起こるといわれています。 |
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| 貧血かどうかの指標を測るのにこの3つがありますが、赤血球の正確な数を測るのが難しく、ヘマトクリット値は脱水状態にあるときに高くなってしまうということがあります。よってヘモグロビン濃度が貧血の指標に適していると言われており、数値によって潜在的貧血状態か否かを調べることが可能です。そこで症状が出てくるのは10g/dl以下になりますが、慢性の貧血の場合は5g/dlになってようやく症状が出てくる人がいます。そこでこのような指数があると潜在性貧血状態がわかり、それによって早めの治療が可能になります。貧血も度が進むと最悪の場合、死に至る可能性があり、スポーツを実施している人は潜在性欠乏状態のときに発見するのが最もよいことです。 |
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| ●貧血とフェリチン不足 |
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貧血についてですが、私のところの選手で2000mの記録が30秒から1分と普通では考えられない範囲で記録の落ちたランナーがいました。病院に行き、ヘモグロビンを測ってみましたが特に異常がない。そこでフェリチン(貯蔵鉄)の量を測ってみると激減していることがわかりました。 |
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| トレーニングがこなせる、こなせない選手に分けると赤血球やヘモグロビンの値はあまり違いがない。違いはフェリチンにあり、これは貧血の第一段階で、12ng以下という数値が貧血かそうでないかの差となっています。 |
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| トレーニングをこなせない選手はヘモグロビンとともにフェリチンの量も測らないと体調不良の背景がわからない。普通、医療機関に行った場合にはヘモグロビン、血清鉄のレベルまででフェリチンは測らないので、選手にはフェリチンを測ってもらうように指導しています。 |
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| フェリチン不足だとジョギング程度では問題はありません。おかしいと感じるのはトレーニングで1、2、3本は大丈夫でもその後は全く走れなくなってしまう。時間にすると1分はもつがその後は全く駄目という選手はフェリチン不足です。 |
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| フェリチン不足の選手の食生活を見ると、昼食が単品、練習後から夕食までの時間が長い。自宅から通っている学生も結構いますが、彼女たちは1から1.5時間かけて通学し、朝食も満足にとっておらず、貯蔵鉄の減少に関わっていると思われます。貧血とは一般的に減量中に起こるといわれていますが、私の体験では太って貧血という例も少なくありません。食事量は少ないのに高カロリー食品をとっているなど食生活に問題があります。 |
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| これはうちの一人の学生の例ですが1日目は12品目、2日目は19品目、3日目は13品目くらいと食べている品目が少ない。これではさまざまな問題が起こってきます。2カ月ほど栄養学の先生に教育してもらいましたが、食生活の管理ができないランナーで競技力の高い者は少ない。よい才能があってもこういう理由で潰れるランナーは意外に多いのです。また経験的な見方をすると、貧血は繰り返し生じます。知識はあっても繰り返してしまうランナーもいるので残念です。 |
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| ●距離優先トレーニングの見直し |
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選手のパフォーマンスは栄養、トレーニング、休養、心理的要因で決まってきます。貧血は女子にはつきもので生理不順になると疲労骨折が起こりやすくなったりします。最初にラドクリフを紹介しましたが、彼女の特徴は今までのマラソン的なものとは違います。筋力トレーニングや跳躍的なもの、またクロスカントリーの要素を多く取り入れています。 |
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| 筋肉はスピードにからんでくるので筋肉量を増やしているのです。今までは日本では距離優先でトレーニングをし、結果も出ています、しかしラドクリフのタイムを見るとちょっと現在のトレーニングではかなわないのではないかと思わせられます。日本の女子ランナーも彼女のようなトレーニングをするときが来ているのではないでしょうか。 |
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ラドクリフの場合、栄養・食事については専属スタッフが帯同しています。彼女に比べれば学生は寂しいもので、肉を買うか、買わないかで悩んでいるのが現実です。こういう問題を指導者としてひとつずつクリアしながら選手のパフォーマンスを上げていきたいと思っています。
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